九、斬り下ろしについて

1.
相手の頭上より、刀先が床上二十五糎位まで斬り下ろ す。即ち、右の手を軽く伸ぱし、両手の力を等しく、両 拳を軽く内方に絞り、前上方に斬り付けるような心持で 前下に斬り下ろす。但し、この際故意に円を描く仕業で 斬り下ろすことなく、極めて自然に円を描くように斬り 下ろすのである。


2.
斬り下ろす時は、右手は軽く伸びつつ円を描いて斬り 下ろすが、この右手の肘を少し曲げつつ、そうしてまた 伸ばして斬り下ろす技法、即ら、両手を折るように角度 をつけて、腕を伸ばし斬るような斬り下ろしは誠に不自 然なものである。


3.
斬り下ろした時の右拳は、概ね右膝の高さに、また、 右膝より石拳が前に出ないよう留意すること。この斬り 下ろした時、鍔が右膝の線位になっておれば良い姿勢が 保たれるものである。


4.
斬り下ろした場合、納刀までの着眼は、斃れた相手を 見越した前方三・四米辺りに目付するのが良いように思 われる。


5.
斬り下ろす時、全身が固くなることなく、下腹より前 に進み出るような心持で斬り下ろし、またこの際、上体 を前方に屈げないよう特に留意すべきである。


6.
斬り下ろした際、腰部より上体が前方に傾くことなく、 下腹を十分前に出し、背部を後方に折るような心持ちで、 なるべく上体を真っ直ぐにして斬り下ろすよう留意する こと。