十、血振るい

これは刀に附着した血を振るい落す形である。最近これ を「血振り」とよく言われるが、大江正路先生は必ず、「 血振るい」と言われたそうである。(森繁樹先生)

1.

斬り下ろせば、瞬時微動だもしない残心の気位をとり、 先ず左手を静かに柄より離して左腰(栗形の上)にとり つつ、刀(刀先)を少し右斜上に上げ回しながら、(下 腹を前下に少し押し出すような心持と)相手を圧する気 位で、右拳を右斜上に回して、右拳関節を少し内方(頭 の方へ)に折り曲げながら、右肘を軽く開いて右鬢にと り、(中指先が軽く髪に触れる程度で、刀先は右後方に、 柄は左斜前に向く)中腰にて立ち上がり、左足を右足に 引きつけると同時に、刀を刃筋なりに頭上より左前下に 回し、(左眼の直前を通りながら)足元の右斜前に振り 下ろして握り締めるのである。

2.
刀を振り下ろした時、右腕は右前下方に軽く伸ばして 十分握り締める。この時、刀の柄頭は右拳の斜右上後方 を向くようになる。

3.
血振るいはもともと右前下方に、自分の足元近くにす るものである。故に、右拳を右前に高くして血を遠方に 飛散するような方技は、理合上では意味をなさないもの である。